目はデリケートなためちょっとした刺激でかゆみを起こすことがよくあります。また患者数が増加傾向にある花粉症やハウスダストのアレルギーでも目のかゆみは多い症状です。他にも目に起こる感染症などの炎症、ドライアイなどの疾患でも目がかゆくなることがあります。
人間は目から多くの情報を受け取っているため、目はさまざまな機能によって守られています。まぶたは、強風や強い光から目を守り、まつ毛は異物などの侵入を防いでいます。まぶたの裏や白目は結膜が覆って保護しています。また、目の隅々を潤して酸素や栄養を届け、異物を洗い流す涙も重要な役割を担っています。そしてこの涙を満遍なく眼球に行き渡らせるために、まぶたや結膜が役立っています。こうした働きによって目が乾いて傷付くのを防ぎ、目の健康を保っています。 目の軽いかゆみは乾燥によって起こることがありますが、かゆみというサインを出すことで目の表面を潤すまばたきや、まぶたを閉じて目を休息させるきっかけにもなります。 ただし、強い目のかゆみは、細菌やウイルスの感染による炎症、アレルギーなどによって起こっている可能性が高くなります。こうした強いかゆみがあるとつい目を擦ってしまいますが、それによって眼球が傷付いて悪化させてしまうこともよくあります。強いかゆみがある場合には我慢せずに眼科を受診して適切な治療を受けて解消させましょう。
鼻や口は粘膜で覆われていますが、目もまぶたの裏や白目の部分は結膜という粘膜で覆われています。粘膜は異物にさらされることが多いため、異物から体を守るための抗体をつくる細胞が多く存在しています。抗体によって入ってきた異物を効率よく排除するための免疫が働くことで体が正常に保たれます。アレルギーは免疫が過剰に働いてしまい、本来であれば排除する必要のないものにも反応して抗体をつくってしまう状態です。抗体が血液や粘膜にある肥満細胞に触れるとヒスタミンが分泌されてかゆみを起こします。 アレルギー性結膜疾患には、アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎などがあります。かゆみ以外に、充血、目ヤニの増加、異物感や違和感などをともなうこともよくあります。
最近、アレルギー性結膜炎が増加傾向にあり、強いかゆみを訴える患者様が増えてきています。これは花粉症、ダニなどのハウスダストのアレルギーでも起こるアレルギー性の結膜炎です。花粉症の場合は花粉の飛散時期に発症するため季節性アレルギー性結膜炎と呼ばれ、ダニの死骸やカビなどのハウスダストで発症する場合は季節に関係なく発症するため通年性アレルギー性結膜炎と呼ばれます。アレルギーを起こす物質であるアレルゲンには花粉やハウスダスト以外にもさまざまなものがあります。 目にはアレルギー反応を起こす免疫細胞が多く、直接空気に触れているためアレルゲンが入りやすいことから、かゆみなどの症状を起こしやすい傾向があります。
アトピー性皮膚炎の症状が目におこる場合に起こる慢性の結膜炎です。アレルギー性結膜炎と同様に強いかゆみを起こします。結膜に巨大乳頭と呼ばれるブツブツできることもあります。
春に悪化しやすいためこの名前ですが、季節に関係なく発症します。激しいかゆみ、結膜の強い腫れ、角膜異常などを起こすなど、かなり強い症状が現れます。
コンタクトレンズによる刺激によって結膜が腫れ、巨大乳頭と呼ばれる大きなブツブツができてデコボコになります。
医学的には麦粒腫と呼ばれています。主に常在菌である黄色ブドウ球菌の感染によって発症し、かゆみだけでなく痛みや腫れ、赤みをともなうことが多くなっています。
パソコンやスマートフォンの長時間使用やエアコンによる部屋の乾燥など、現代は目が乾きやすい傾向があり、ドライアイでお悩みの方が増え続けています。涙による保護が不足して感染リスクが上昇しますので、他の眼科疾患を合併しやすく、悪化させやすいため、適切な治療と生活習慣や環境面を見直すことで目の乾燥を解消することが重要です。
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かゆみや痛みが強くてどうしても触れてしまう場合や、かゆみが長く続く場合には、早めに眼科を受診してください。かゆみの症状を軽減させて、原因を確かめ、適切な治療を行います。アレルギーが疑われる場合には、原因となるアレルゲンを特定する検査を行います。主要なアレルゲンであれば、結果がすぐにわかります。 アレルギーではアレルゲンをできるだけ排除することが治療・予防に大きく役立つため、何がアレルゲンなのかを知ることで有効な予防が可能になります。
目のかゆみが強い場合には、抗アレルギー点眼薬や抗ヒスタミン点眼薬が効果的です。抗アレルギー点眼薬は、かゆみを誘発するヒスタミンなどが放出されないよう肥満細胞の膜を安定化させます。抗ヒスタミン点眼薬は、ヒスタミン受容体を直接ブロックすることでかゆみの情報が脳に伝わらないようにして症状を軽減させます。 また、状態が悪化している場合にはステロイド点眼薬を処方して短期間の解消につなげることもあります。 ものもらいなど細菌感染によって炎症が起こっている場合には抗生物質が有効です。ドライアイの場合には、人工涙液や涙の保湿力を向上させる点眼薬、有効な成分を増やす点眼薬などが使われます。 かゆみを緩和する点眼薬は種類が多いため、患者様の症状や体質、ライフスタイルなどに合わせた治療をおこなっています。 なお、点眼前には必ず手をよく洗って、容器の先がまつ毛に触れないようにしてください。
アレルゲンをできるだけ排除することが基本です。受診してアレルゲンを確かめ、効果的な対策を行いましょう。 花粉の場合は、ネットなどで花粉情報を確認し、飛散時期の外出をできるだけ控える、外出時にはマスクや帽子、つるつるした素材のアウターを着て出かけ、帰宅時に玄関前で花粉をよく払ってから入るなどを心がけましょう。居間や寝室など、長時間過ごす場所には、花粉が入らないように配慮します。洗濯物や布団の外干しもできるだけ避けましょう。 ハウスダストの場合には、こまめな掃除が不可欠です。また、家の中に布製品をできるだけ置かないようにしましょう。カーテンはブラインドに、こたつやカーペットを避けて、ソファなども布ではない素材のものにすると効果的です。また、高温多湿にならないように心がけ、こまめに換気してください。布団は日光に当てて干すか、布団乾燥器でしっかり乾燥させた上で掃除機をかけてください。また、空気清浄機の使用も有効的です。 アレルギー症状でかゆみが強い場合はできるだけコンタクトレンズを外し、メガネをつけるようにしてください。
こまめに手洗いしてください。また、コンタクトレンズをお使いの場合には、正しいセルフケアや装着を心がけてください。
部屋の湿度を保つ、顔に風が直接当たらないようにするといった対策が重要です。また、パソコンやスマートフォンを使用する際には意識的にまばたきの回数を増やしてください。目を十分に休ませ、睡眠時間もしっかり確保しましょう。